ここ数年、タイや中国や香港のコンビニでおでんを見かけたという情報を耳にします。日本生まれのおでんが“世界進出”をしているわけですが、もっと前から親しまれているのが、韓国と台湾です。どちらも、戦後、日本が植民地にしていた時代に置いてきた物なのです。
 韓国ではうどんやのり巻きなどが同じように残り、すでに自国の食文化に取り入れてしまっています。そのせいか「おでんは日本から来た物ではない」と主張する人も少なくありません。けれども、おでんの姿や呼び名を知れば、間違いなく日本から伝えられたことがわかるでしょう。

 例えば、韓国では「オデン」とまったく同じ呼び名。一時期、韓国の識者が集まって新たな韓国語として「オム」(練った魚)と名付けたそうですが、一般には普及しませんでした。そのなごりとして、屋台の看板や市場の値札にハングルでオムと書かれているぐらいです。また、近年になって「テンプラ」という言葉も広まり、ソウルまで行くと韓国語として定着している感があります。

 台湾での呼び方は「黒輪」で、これを台湾語で発音すると「オーレン」になります。台湾人はd音とr音の区別がなく、ダ行やザ行がうまく発音できません。そのため、オデンがオーレンになり、それに漢字を当てはめたわけです。ちなみに黒輪を北京語読みすると「ヘイルゥン」になって、まったく意味が通じません。

 おでんのだしは、韓国ではしっかりとした昆布だしが使われます。韓国の沿海では昆布が採れないし、伝統料理のだしに使われることもありません。台湾へはさすがに昆布が運ばれないのか、だしはほとんどありませんでした。そのせいか、台湾のおでんにはケチャップに砂糖やトウガラシを加えた「甜辣醤(テンラージャン)」がかけられます。

 一方、韓国ではゴマ油とトウガラシ入りの醤油を付けて食べます。右手の串刺しおでんをかじりながら、左手のカップでだし汁をすくって飲むのが韓国流。鍋に直接カップを入れるのは不衛生かもしれませんが、食事に汁物が欠かせない韓国では、ひとつの鉢から各自がスプーンですくって飲む習慣があります。きっと、その影響もあるのでしょう。

 では、おでん種を比べてみることにしましょう。韓国では細長い串に棒状や板状の種が刺さっています。おでん種そのものをオデンと呼ぶ韓国では、オデンは棒状や団子状(昔ながらの日本のおでん)、テンプラは平べったい形(関西と同じ概念)、オムは惣菜として食べる高級な物と区別されるようです。台湾のおでんは「~巻」や「~丸」というようにバリエーション豊富で、鍋の様子は日本とほとんど同じです。
 台湾のおでんは年配の人に好まれ、若者たちは人気がありません。ただ、揚げたての「薩摩揚」は夜市の定番メニュー。韓国では立ち食い屋台があちこちにあり、遊び疲れた若者が気軽につまんでいる光景をよく目にします。

 ちなみに、ソウルや台北には「おでん専門店」が何軒かあります。どちらも、店名におでんの“本場”の地名が付けられているのがおもしろい。韓国の本場は釜山、台湾の本場は高雄です。海に近く漁場に恵まれていることもありますが、戦時中、日本人が多く住んでいた地域ということも関係しているのかもしれません。

 「韓国の沿海では昆布が採れない」と書きましたが、韓国の南西部の島々では日本と同じ技術で昆布の養殖が行なわれているようです。品質的にはやや劣るようですが、次回は韓国の昆布産地を訪ねたいと思います。(06/11/28)

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