世界中の被害者に北朝鮮は謝罪せよ

 1978年に香港で北朝鮮に拉致され、86年にウィーンで脱出に成功した韓国の映画監督・申相玉(シンサンオク)さん(75)が12日、米国の滞在先で読売新聞の電話インタビューに応じ、「北朝鮮は世界中の拉致被害者にも謝罪するべきだ」などと述べた。

 ――金正日総書記が拉致を認め、謝罪しました。

 非常に驚いた。(金総書記は)僕らが考える次元を超えていて、「映画が好きだから」という理由だけで映画人を拉致した。4年間は妻と別々に監禁され、そのあとはいくつかの映画を撮らされた。そして妻と共に脱出した時には、「能力の限界を感じて勝手に出ていった」と非難された。あの国からの謝罪なんてあり得ないと思っていた。

 でもこれは、どうしても日本と国交を結びたい北朝鮮の、その場しのぎの見え透いた策。北朝鮮にいた8年間に、世界各国から拉致されてきた人たちのことを見たり、聞いたりした。本当に変わろうとするなら、僕らを含めて拉致した人たち全員に謝るべきだ。そうしなければ、世界から信用されることはない。

 ――15日には、5人が一時帰国します。

 カップルは日本人同士なんでしょ。その子供は当然、日本人だ。日本人が日本に帰るのに、どうして「一時」帰国なのか。日本はなぜもっと率直にものを言わないのか。中途半端なやり方では、日本にとっても北朝鮮にとってもよくない。

 「拉致」というのはある日突然、人生を失うのと同じこと。まして今回の日本人の場合、20年以上もあの国に閉じこめられていた。僕らでさえ、8年の間に世の中にファクスという機械が普及していたことに大変なカルチャーショックを受けたものだが、今はインターネットで世界とつながる時代。今の10年、20年といえば、昔の300年ぐらいに感じるんじゃないか。

 ――日本はどうするべきでしょう。

 生存者は家族と共に永久に帰国することを、徹底的に北朝鮮に求めるべきだ。拉致被害者のために国を挙げて「北」と向かい合っている日本を少しうらやましくも思う。

申監督夫妻拉致事件

■8年後に脱出

 申相玉監督と妻で女優の崔銀姫(チェ・ウニ)さんは78年、香港で別々に拉致された。申監督は日本の事件と同じように、袋詰めで海岸から運ばれた。夫妻は金正日総書記と直接面談し、その意向を受けて、「帰らざる密使」「プルガサリ」などの映画を撮影した。86年3月、ウィーンのアメリカ大使館に駆け込んで脱出、現在は米韓両国で映画制作に携わっている。著書「闇からの谺(こだま)」の中で、ベールに包まれていた金総書記の素顔を初めて紹介した。

読売新聞(2002年10月13日付)
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