女性演歌の代表選手が、東京・浜町の明治座で珍しく長期の座長公演を張っている。その実績から確実な動員が見込まれるが、芝居と歌謡ショーという構成に興味がないとの理由で縁遠く、5年ぶりとなる。

 久々の座長公演の芝居の原作は、なかにし礼の直木賞受賞作「長崎ぶらぶら節」。石川演じる、長崎の芸者、愛八が初めて恋した学者(近藤正臣)と廃れかかった民謡を探す旅に出る。歌手の座長公演の芝居といえば、肩の凝らない娯楽作が多いが、今回は本格的だ。安易に笑いをまぶさず、正面から丁寧に男女の半生と花街の人間模様を描く。脚本・演出は金子良次。

 せりふも多く大半が長崎弁。熊本出身の石川とはいえ、覚えるだけで大変だったはずだが、威勢の良さと同時に悲恋に泣く切なさも演じ分け、健闘している。

 原作が骨太で会話一つにも味があり、見応え十分。芝居だけを拡大し、独立して上演しても成立するかもしれない。歌を求めて訪れたファンには重過ぎるのではないかという心配さえ浮かんだ程だ。

 後半のショーも90分超を歌い通す。「津軽海峡・冬景色」などの代表曲が並ぶが、途中でアコースティックな編成でのコーナーを設けるあたりが、音楽的な挑戦心の強いこの人らしい。

 圧巻は、終盤の「風の盆恋歌」と「天城越え」。女心の清らかさと裏腹の強欲さをつややかに歌いきる。生々しい男女の愛憎を歌いつつ、品格を保つ歌唱は映画に例えれば、文芸大作。こうした曲調においては、第一人者であることを改めて示した。

 全編通して、実に力の入った公演。他の座長公演の常連歌手にも刺激を与えるだろう。30日まで。(大野宏)

 ――7日。
(2006年5月11日 読売新聞)

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